スーパーチャージャーとターボチャージャー(複合過給機システム)


排気量を大きくしないでパワーアップを図る方法には過給機を使えば良いが、ターボチャージャーの場合は多少のタイムラグがあり、それを補う目的で、低速回転時にはスーパーチャージャーによる過給を行い、高速回転時にはターボチャージャーを使用する複合過給機システムがマーチ・スーパーターボ用に開発された。


複合過給機システムはランチアで同様の方式が作られただけで、世界でランチア・デルタS4とマーチのスーパーターボのみが採用している特異なシステムである。ランチア・デルタS4はグループBのラリー競技用として開発された特殊な車であり、約200台しか生産されなかったのに対してマーチスーパーターボは数千台生産され、広く市販されたところに意義がある。
複合過給機システムは二つの過給機をそれぞれ異なった回転域で作動させるために、それぞれの過給機の作動タイミングと円滑な移行をコントロールするのが極めて難しいが、マーチ・スーパーターボはコンピューター(ECCS)と複雑なバキュームコントロールを用いてコントロールしている。


エアクリーナーから吸入された空気はエアーフローメーターを通り、まず、ターボチャージャーで圧縮される。ターボチャージャーを通過した空気はスーパーチャージャーでさらに圧縮される。圧縮され、温度の上昇した吸気はインタークーラーで冷却され、スロットルを経て噴射された燃料とともに燃焼室に入る。
特に巧妙にできているのは、負荷の低い状態ではスーパーチャージャーを電磁クラッチでカットして作動を止めたり、ターボチャージャーが主となって過給している高回転時にはスーパーチャージャーによる抵抗を軽減するためにスーパーチャージャーをバイパスする空気回路が設けられている。このコントロール弁はECCSからの信号を受けてソレノイドとバキュームによって作動される。


スーパーチャージャーの作動条件については上の表に示すようにアクセルの踏み具合や、エンジンの負荷の状態、そしてエンジンの回転数などいろいろな要素でコントロールされている。
スーパーチャージャーについてはパイロットランプもあるが、電磁クラッチの作動するリレーのカチッという音が聞こえる。


実際のパイプやホースのとりまわしによるターボチャージャーからスロットルチャンバーまでの実体図は次の通りであるが、実車のエンジン・ルームでは補機類があったりしてインタークーラーとターボチャージャーのカバーしか見えない。吸入空気が通るパイプをつなぐゴムのジョンイト・ホースがたくさんあり、それらのバンドの部分から加圧した空気が漏れることがあるが、そのチェックと増し締めは極めて困難である。



●コメントなどはこちらへメールでお寄せ下さい。
スパムメール防止のために全角文字でメールアドレスを記載してありますので、半角で入力しなおしてくださるようお願いします。

トップページへ戻る